行動なくして
実現なし
001.想い

憲法改正と安保法制

去年11月、憲法公布70年の節目に、信濃毎日新聞が、県内の全国会議員にアンケート調査を行なった。質問の中心は、「憲法改正の必要性はあるか」「憲法9条改正の必要性はあるか」というものだった。

9条改正の是非については、私以外の国会議員は与野党全て、「必要ない」か、「どちらとも言えない」という答えだった。私だけが、「改正の必要がある」と回答し、周辺から心配された。

他の議員の多くは、自由記述欄に「自衛隊を認めることは必要だ」と書き、また、「集団的自衛権は認めない」との意見もあった。私も、自由記述欄で他の議員と同じように「自衛隊を認める必要がある」ことと、「集団的自衛権を憲法で認めない」ことの2つが重要であると答えた。

昨日(10月8日)の信毎にも、私の9条についての考えが短く書かれているが、私は、9条も9条以外の条文も、議論はどんどんやればいいと思う。しかし、私が憲法改正を一方的に進める気はない。憲法は、国民が最終的に国民投票で決めるものだからだ。

「臨時国会を開く義務に期限を設けるべきだ」とか、「解散権の制約」とか、「環境権」とか、「知る権利」とか、憲法改正の論点は9条以外にもある。これらのことについても、大方の国民が合意すれば、国会内も全会一致なら、やっていいと思うが、良いと思うものを憲法にどんどん書けば良いかというと、そうでもないと思う。例えば、「知る権利」を憲法で書いたら、「個人情報の保護」や、「忘れられる権利」はどうなってしまうのか。仮に書くとしたら、その条文は、非常に難しいだろう。

憲法は、どこの党の誰が政権を取っても、その時の権力を縛らなければいけない不可欠なものが記載されている。例えば、「犯罪被害者の人権」について、日本国憲法には全く書いていないが、犯罪加害者については、「捜索は令状を取ってからやれ」とか「拷問をするな」という趣旨のことが書いてある。これは、犯罪被害者の人権を軽視しているのではなく、犯罪被害者の人権を守ることは言わずもがな、当然のことで、どこの誰が権力者であっても、加害者への拷問などは絶対やってはいけないということで明記されていると理解している。犯罪被害者の人権を憲法上明記しようという議論もかつてあったが、犯罪被害者を支援する法整備が進み、警察の被害者対策も充実してきたので、最近の憲法改正議論では、出てこなくなっている。

戦後の憲法改正議論の中心は9条だと思う。

9条があるから戦後の平和な日本、紛争と一線を画す日本があった。しかし、その一方で、9条の条文は変わらないのに、集団的自衛権も憲法解釈で認められるというように、政治の意向で解釈がどんどん進んでいった。

私は、「自衛隊は合憲」「自衛権がある」「専守防衛に徹する」ことは、大方の国民の理解が得られていると思う。だから、もし、9条を変えたいという声が大勢だというのなら、この3つを明記する議論は、しても良いと思う。自衛隊を憲法に明記することは、7年前の、最初の選挙から、新聞アンケートに答えてきた。それは、私が記者時代に自衛隊の人たちと取材や付き合いがあり、色々思うところがあったからだ。

集団的自衛権については、一昨年国民の意見が真っ二つに割れた。また、長年政府も「集団的自衛権は憲法上認められない」といってきたのだから、一内閣が解釈を変えたからといって、集団的自衛権は、憲法に盛り込むべきではない。

もし、9条を変えたいと大方の国民がいうのであれば、私はこれまで縷々書いてきたような「歯止めをかける9条」を意見としたい。

なぜ、昨年11月の信毎アンケートに、他の議員が選択肢をぼかす中で、私一人踏み込んだのかというと、昨年夏の参議院選挙以降、憲法改正の現実味が出てきたからである。憲法改正がどのような方向になるか全くわからないが、少なくとも私の考えは明示しておくべきだと思い、答えた。

また、集団的自衛権については、日本の周辺で有事があった際のことを、憲法ではなく法律で考えておくべきで、その点で、政府の安保法制は集団的自衛権の範囲が広いので、見直しが必要だと考えている。日本周辺の、集団的自衛権を法整備することは、現実的に必要だと思うし、そういう議論を一昨年して、対案を提出した。

「踏み絵」には、「憲法改正を支持し、憲法改正議論を幅広く進めること」と書いてあったが、議論は幅広くやれば良い。また、「現行の安保法制については、憲法に則り適切に運用する。その上で不断の見直しを行い、現実的な安全保障政策を支持する」とも書いてあったが、見直すことも良い。

大事なことなので繰り返すが、憲法改正の議論は大いにけっこうだし、そうであれば、考えは示す必要があるだろう。しかし、憲法は国民が決めるものなので、政治家や政党がトップダウンに進めるものではない。

国政報告会やミニ集会で昔から話してきた内容だが、この際、改めて明確にしておく。

しんまい 憲法