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尖閣映像流出とメディア

こんばんは。

尖閣諸島の中国漁船衝突映像がインターネットに流出した問題は

今日1日でおさまる騒ぎではなくなっている。

いまのところテレビと新聞は、映像から分かったこと、

つまり中国漁船の衝突が故意だったかどうかということと、

政府の情報管理の2つに焦点をあてて報道を続けている。

仮に映像をインターネットに投稿した人物が

海保や検察の関係者など公務員だったとしたら、

その人物は守秘義務違反で刑事責任が問われることになる。

 

しかし今回の映像はその存在が広く知られ、

国会では公開要求が相次いで一部の議員に公開されるなど

公開要求を望む声が大きかった。今なお全面公開論は強い。

 

今回の映像がもしテレビ局に持ち込まれていたら、

また、テレビ局が関係者を説得してひそかに入手していたら

歴史に残るスクープになっただろう。

そして、スクープを報じたテレビ局は報道の自由、知る権利を掲げて

犯人探しと徹底的に戦うだろう。

世論からも取材源を守るべきだという声が公然と出たはずだ。

 

過去に国家の秘密をスクープしながら

報道機関が取材源を守れなかったのが、

事情はやや異なるが有名な「西山事件」である。

毎日新聞の記者が外務省の関係者から入手した資料をもとに

沖縄返還にかかわる密約の存在を暴こうとした取材だった。

 

今回インターネットに映像を投稿した人物が

どのように考えたのかは分からないが、

映像を一目見るだけで誰が見ても本物と分かる、本物だと伝わるものであれば

メディアに持ち込んで調べてもらう「裏取り」をする必要はない。

また、中国も関わる話なので1テレビ局に持ち込むよりも

インターネットの方が反響が期待できると考えたのかもしれない。

しかし、インターネットに投稿するということは自らを守る術をもたないリスクを伴う。

投稿者がメディアを信用しないでインターネット投稿を

決断したとも考えられなくもないがその真相は分からない。

 

「西山事件」では、資料を入手した記者が

資料をそのまま記事にしては取材源が守れないと感じ、

あいまいな記事を数本書いたが反響が小さかった。

そこで密約を世に問うため国会議員に資料を渡した。

 記者は具体的な記事化を断念して

密約の存在を世に明かす場に国会を選んだ。

 

今回、インターネットに映像を投稿した人物は

メディアを選ばずにインターネットを選んだということになるのだろうか。

いまの段階で真偽は分からない。

 

ただ、今回の流出映像についてテレビ局や新聞は今後、

スクープという報道の使命をインターネットにもっていかれた

危機感を内に秘めながら取材を続けることになる。

そして、

報道機関のスクープだったら守るべき情報源を探す取材もしなくてはならないことに

やりきれない気持ちをもつ報道関係者もきっといるはずだ。