レッテル社会の限界   2010 年 11 月 25 日

こんばんは。来春卒業が見込まれる大学生の就職内定率が過去最低だというニュースを最近よくみます。昨夜(24日)の、NHK「クローズアップ現代」でも取り上げられていました。番組で主に言われていたことは、「企業側が、リーマンショック以来の不況で採用を少数厳選化している」。そして、「多くの学生がまじめに就職活動をやっているにも関わらずことごとく落とされて自信を失っている」とのことでした。また、学生側の問題をあげるとすると「大企業志向の学生が多く、求人がある中小企業に目が向いていない」ということで、積極採用を進める中小企業や、中小企業と学生をつなぐ取り組みも紹介されていました。内定率は10月1日現在で57.6パーセント。 17万人がまだ内定を取れていないということでした。

私が就職活動をした約10年前、そして入社後に感じたことは就職活動は学校のテストやスポーツの勝負とは違うということです。就職活動にはルールや配点などの絶対的な評価基準がありません。就職試験は、エントリーシートを提出して自分の経歴を会社に見てもらうことから始まります。そして筆記試験や面接が主にあります。私見を申し上げると、いい大学を出て部活動や留学など、課外活動で実績があれば有利だと思います。これは資格などを持たない一般的な就職活動を想定していて、粗っぽい私見であることは分かっていますがご容赦ください。学生としての経歴が豊かでも、話し方や考え方が個性豊かすぎると苦戦する人もいます。これは面接の限界だと率直に思います。私は就職の相談に来た後輩には必ず「就職活動は野球と違って絶対的な勝負じゃないから、落とされても『縁がなかっただけ』でむしろ『採用担当者が悪いぐらい』に前向きに考えて他にいった方がいい」とアドバイスしていました。

企業の採用基準が、いい大学を出て課外活動もしっかりしているかどうかという『学生をレッテル化』する傾向は学生にも伝播します。いい大学に入り素晴らしい学生生活を送り、目標が定まらないまま社会に出る時間が迫ってきます。就職活動と就職後の数年間については女性のほうが目的意識がはっきりしていたと、私は自分のころを振り返ると感じます。女性の方が、大学を選ぶ段階、学部を選ぶ段階で自分の学びたいことがはっきりしている人が多く、就職に対するスタンスも明確だったと思います。昔、ある大企業の方が「就職試験を本当に横一戦でやると女性の方が成績がいい。しかし、女性が長く仕事を続けられる環境を会社が備えていないため、男性の採用割合を増やしてきた」と話していたことを思い出します。こうした厳しい環境の中で女性が男性より目的意識があることは必然だったと私は思います。私は政治に関心が昔からあったのでメディアの入社試験をいくつか受けていたときは、将来、治記者になるという目標だけはもっていました。それ以上に具体的なものは恥ずかしながらありませんでしたが、人より体力と忍耐力があったので、記者の面白さややりがいを感じるところまでは仕事ができたと思っています(苦笑)

 高校大学時代の友人やNHK時代の同僚など、私の回りには転職した人がたくさんいます。会社に入って2、3年で転職すると、「忍耐力がない」とか、「他の会社にいっても通用するわけがない」とよく言われます。たしかにそういう人もいると思います。しかし、私の知る多くの転職組は会社に入って一生懸命仕事をして、そのうえで自分の将来を考える。やりたいことを見つける。一度きりの自分だけの人生をどう過ごすかを真剣に考えた末の決断をしています。ここで言いたいのは、転職、つまり最初に入った会社を辞めることを世間がマイナスにとらえるのはもうやめたほうがいいということです。年配の方だって、社会に出てから、転職ではなくても人生で1度や2度の大きな転機を経験しているはずでず。

すこし話がそれましたが、私は学生をレッテル化する就職戦線が、雇用を硬直化させている原因だと思っています。そして学生の選択の幅を大企業に狭めているのも「レッテル社会」のせいだと私は思います。学生の志向を大企業に狭め続けてきた結果、後継者問題に悩む業界や人を雇いたくても余裕のない中小企業を多く生んできたと思うのです。

内定率の低下をうけて一部の業界では最近、「大学卒業後3年間は『新卒』扱いにするべきだ」という声が出ています。私は、新卒という言葉すら要らないと思っています。大きな会社だって、学歴社会の優等生ばかり集めた結果与えられたことしかできないなど人材に問題を抱えている組織がいくつもあります。大卒が就職の最大のチャンスとなっている現状を変えて、一度社会に出てからも就職のチャンスがもっと簡単に与えられるようにすることが大切です。選挙の時も言いましたが、いい大学を出ただけで目的意識のない正社員より契約社員が実際の現場を支えていることは多いのです。それは目的意識、プロ意識の差です。

不況は確かに大きな要因だと思いますが、レッテル社会の限界に気付くべきです。 大卒の初任給を下げて採用は確保する。契約社員や転職組で力のある人を正社員に引き上げる。そして転職組を、社内の昇進で生え抜き組と差別しない。雇用の流動化を進め、転職を社会が後押しする。そうすれば多くの人が大企業がすべてではないことにすぐに気づくし、回りに流されずにやりたいことをやれる社会になると思います。今苦しい業界に目を向ける若い人たちがもっともっと増えると思います。

最後にこの雇用・就職戦線の流動化は教育の自由化から始めないといけないと考えています。中学までに基礎学力を徹底的にやる。そして高校からは、大学進学だけを学力の物差しにすることをやめないといけません。学歴社会の競争を否定する人は多いですが、私は教育に競争はつきものだと思います。ただ、その物差しが大学進学以外にも、もっとたくさんないといけない。もっと多様な価値観の中で競争をしていくべきです。最近、16歳で公認会計士に合格した男性が話題になりました。塩尻市にはワインの勉強ができる高校があり、地元のワイナリーに就職する人がいるということも前にテレビで取り上げられていました。高校からは、様々な業種の人の話を聞かるなど将来の選択肢を増やす教育がいいと思います。

選挙中は雇用の流動化についてここまで長く話す機会に恵まれませんでしたが、私が目指す社会の柱の1つですので是非ご意見をいただきたいと思います。

井出ようせいブログシリーズ 被災地をみて