南牧村 村長選挙   2011 年 11 月 11 日

昨夜いってきた南牧村村長選挙の演説会について書きたい。南牧村村長選挙は13日に投開票が行われ、新人の酪農業・高見沢武史氏(47)と、現職で再選を目指す菊池幸彦氏(69)が立候補している。昨夜の演説会、主催者から出された演題は以下の3つだった。

①TPP問題について

②村農畜産業のこれからについて

③冬期雇用について

上記3テーマの他、④自由発言を含めて1人あたり30分が与えられた。両候補者の演説を私なりに整理したものを以下に書く。

 

・高見沢候補

『①TPPは普天間の代替ではないかと思うほど唐突だ。畜産は大打撃を受けるし農産物も同じだ。経済だけの問題ではない。国のこれからを考える問題なのに議論が軽すぎる。いま参加したら農村から人がいなくなり国土が荒廃する。農産物の高騰が予想され自国の農業が衰退する。農業を守れなければ国が存続するとは思えない。他国に食料を頼るのは大変危険だ。若者が農村に住み続ける環境が整わない限りTPPは反対だ。
②村の発展を考える上で歴史を知ることが大切だ。明治時代から牧畜、酪農林業開発に先人たちが取り組んできた。厳しい自然環境の中、戦中戦後にようやく花ひらいた。農耕馬、軍馬の飼育が盛んになり、戦時下は2600ヘクタールが軍用地として陸軍演習に使われた。戦後そうした土地が払い下げとなったが、依然として高冷地での穀物生産は厳しかった。昭和30年以降に野菜の栽培が積極的になり、日本一の夏野菜の産地となった。近年では産地間競争が激化、連作による老朽化など、抜本対策がないのが現状だ。村を発展させるには、地域ぐるみの複合型循環農業が必要だ。また、販売はますます差別化が必要になっている。震災にともなう放射能漏れ問題の中で、情報発信は優位販売につながる可能性がある。他の産地に負けない自信はあるが、大消費地での認知度がまだ低い気。村長がトップセールスマンにならないといけない。直売所、アンテナショップも充実したい。季節のイベントは投資と考え、長期的視点で開催していきたい。農産物のブランド化が大きな意味で後継者育成につながる。子どもが他の地域に移ったときに村産物をその土地で食べたら郷土愛が芽生える。次男、三男のために村営住宅の整備と農地開拓を進める。直売所は観光もプラスであり、建設予定の野辺山インターを大消費地への拠点にしたい。
③冬期雇用について。これまでは土木、炭焼き、諏訪地方への寒天の出稼ぎぐらいで、スキー場ができて雇用が生まれたが、閉鎖されてまた悪化している。短期的視点では、最先端の産地との提携、交流。雇用情報の提供をしたい。長期的には農産物の加工所の設置、通年栽培作物の普及。中部道路関係も雇用が期待できる。企業誘致も推進したい。現実は大変厳しいが、議論を重ねて実行に移す。
④東北、栄村の震災で地域の人のつながり、結びつきが大切だと感じた。村だけではどうにもならない。近隣市町村、県とも連携する。農業振興と観光が重要だ。高原野菜と畜産は村の財産。しかし、私たちはその誇りを自覚していない。野菜と畜産を融合させた全国一の循環型農業を築きたい。観光は、もうひとつの基幹産業だ。旅行会社だけの誘客には限界があり、地域による誘客のしかけと仕組みづくりが必要だ。「100キロウルトラマラソン」はまさにそうした取り組みで、ランナーにもっと長く滞在、周遊してもらえるようにしたい。イベントは無駄金ではなく、観光の起爆剤だ。最後に教育について。進学や就職で離れた若者が戻れる村、子育てしたいと思える村にしたい。教育は村作りの原点だ。「住んでいてよかった、住んでみたい」町づくりをすすめる。村づくりは、ゴールのない駅伝のようなものに思えてならない。タスキを受け継いだら、しっかり次の世代に引き継いでいきたい』

対する菊池候補の主張は以下のようなものだった。

・菊池候補

『 ①TPPは農業だけではなく、暮らしと経済などあらゆる分野に影響する。特に医師会が反対しているのは混合診療の問題だ。日本の冠たる介護保険が崩れる。農業、食の問題だけではない。国の形が変わる大きな問題。でもまだ知らない人が大半だ。全国町村会も川上村長を先頭に、農協はもちろん、県の農業委員会も反対の意思表示をした。知事も最近反対を明言した。私も9月議会で断固反対を表明した。村にどんな影響があるかというと、なんといっても畜産。北海道は、2兆1000億円の減収を道庁が試算した。農水省は7兆9000億円のマイナスと試算し、食糧自給率が13パーセントになるという。バター、チーズが関税0になると、北海道は牛乳にシフトするだろう。そうすると村は北海道と競争になり、大変なことになる。村の農業は野菜と酪農の両輪。野菜も産地間競争で大変になる。たとえば群馬のこんにゃく。関税が撤廃されるとこんにゃくができなくなり、群馬も野菜を始めるだろう。そうしたら村と競合する産地になる。政府は規模拡大というがそんな程度で対抗できない。アメリカは日本の100倍、オーストラリアは1500倍。村にとってTPPは百害あって一利無し。
②畜産業は大変な状況にある。川上と並んで大型農業化してきたし外国人も雇用している。規模拡大は限界にきている。求められているのは安定した雇用。外国人とのトラブルもあった。雇用を真剣に考える。野菜価格も不安定だ。今年はなんとか平年並みの価格を守ったが、廃棄事業、調整廃棄があった。農業の後継者にビジョンを示すのが村長の役割だと考える。自給率40パーセントということは60パーセントを外国から買ってこないといけない。しかし外国にも食料が有り余っている時代ではない。食料危機がくると思っている。農業はかけがえのない産業だ。農業は水や国土に保全し、環境を守る産業だ。川上村長は、農業は生命産業といっている。現実的にどうすればよいのか。1つは国もすすめている「環境に優しい循環型農業」。農業委員会から提案されて進めてきた。村では3200頭の牛がいる。糞尿は年間7万から9万トンでるので、野菜畑に還元する。化学肥料を減らすせば消費者に安全でおいしい野菜を届けることができる。去年から野菜農家と畜産農家で検討委員会を設置した。時間がかかるが、野菜の産地として生き残る一大プロジェクトだと思う。必ず成功させたい。廃プラへの補助、品種目開発の補助、酪農ヘルパーへの補助も続けていきたい。また国の予算増額が大事。国と県に強く求めていきたい。
③冬期雇用。いますぐできることは、間伐材の有効利用が雇用につながると思う。チップ化、最近話題となっている薪ストーブ、ペレットストーブも研究したい。間伐が進めば森林整備が進む。村長になったばかりのときに岩手県葛巻町を視察した。牛が人口よりも多い町。自然エネルギーをいかした町づくりを進めている。風力、地熱、太陽光。糞尿を利用したバイオマスエネルギーも。村でも可能ではないかと思う。また、福祉の充実とあわせた雇用も考えたい。駅の前に「希望の家」をつくった。ひとり暮らしのお年寄りが村には111人もいる。困るのは雪かきができないこと。ボランティアがやっているが、これも雇用の対象としたい。景気が悪い中、短期雇用というのはさらに難しいが、小さな雇用を積み重ねていくことが大事だ。若い人の力と発想を借りたい。それをサポートするのも行政の方法だ。企業誘致については最近の企業はほとんど海外にいってしまう。経営不振になれば尻拭いは自治体がやることになり大変だ。安易な誘致は難しい。とにかく小さな雇用でも積み重ねて安定雇用につなげる。
④その他。子どもが少なくなっている。子育てに大きな力を入れたい。村長の給与は3割カットする。第三子の保育料は無料にする。3人目以上には出産祝い金も出して、いっそう応援したい。医療費もいまは中卒まで無料だが、高卒まで無料にしたい。さらに入院の食費も全額補助する。若者村営住宅もここ10数年建設がなく、緊急の課題だ。私はこの4年間、公正で清潔、利権に関係ない村作りしてきた。安心して子育て安心して老後が迎えられる村を作りたい。」

演説会に参加できなかった村の人や、南牧村に関心のある方の一助となれば幸いである。私の感想は改めて書きたい。

追記 「南牧村の概要」
南牧村は人口3200人余り(有権者は2600人余り)。長野県東端に位置し、標高1000m~1500mの高低差の激しい地域からなり、1平坦部に、高原野菜を主生産とする野菜畑が広がる。年間平均気温6.9℃と低く、冷涼な気候を生かして高原野菜が生産され、県下第2位の売上高。また、野辺山の牛乳工場で作る「ポッポ牛乳」や「ヨーグルト」等の乳製品は有名ブランド。その他にも、夏には避暑地として多くの観光客が訪れる。

井出ようせいブログシリーズ 被災地をみて