これからの農業2   2012 年 6 月 10 日

意欲ある農家、また、少数精鋭集団が事業を拡大していくにもざまざまな規制がある。

例えば、農家が自家製の味噌を売る場合、食品の営業許可をとるには、保健衛生法で決められた専用施設を置くなど、様々な取り決めがある。法律によると味噌を販売するには、工場やら倉庫やらが必要で、その設備投資を考えると気軽に自家製味噌というわけにはいかない。法律は「味噌屋しか味噌を売らない」と思っている。
また、栽培した小麦でパンを作って売ろうとする。クリームパンとあんパンを作りたくても、クリームパンは「菓子製造」、あんパンは「あん製造」と業種が異なるのがいまの法律だ。だから、それぞれの届出と手数料などが必要になる。いま、生産から加工、販売までを手がけることが、農業の6次産業化といわれて注目されている。しかしこうした規制が、農家の創意工夫の前に立ちはだかっている。
萩原さんは「補助金も大事かもしれないけど、自由にやらしてもらえる環境を作ってほしい」と言っていた。農業をとりまく環境は厳しい。簡単に利益はあがらない。そうした中で頑張る農家の意欲と創意工夫を妨げないことも、政治の大事な役割だ。

 農業の将来を担う力強い芽が、私の身近にある。

その芽を伸ばし、そして増やしていくお手伝いが少しでもできればと思う。(終わり)

これからの農業1   2012 年 6 月 10 日

6月9日の信濃毎日新聞朝刊・東信版に、私が農家と話している小さな記事が掲載された。佐久穂町で、新規就農を目指す人を研修生として受け入れている萩原さんの「のらくら農場」にお邪魔していることは前にも書いたが、もう少し書きたい。

新規就農をどう増やすのかを考えてきた。農業に興味がある若者が就職の選択肢として農業を選べるようにするには、企業の農業参入を広げることが必要だと思ってきた。農業参入の規制緩和が必要だと思っている。

しかし、萩原さんの話をきいていると現実は厳しい。

萩原さん曰く、「いま、農業で食べていくのは相当大変ですよ!」 居酒屋チェーン店「ワタミ」が始めた「ワタミファーム」も苦戦が続いているという。利益が出ないのに参入する企業はないだろうというのが萩原さんの率直な思いだ。

新規就農を増やすために、長野県も手を打っている。県は、農家が就農希望者を指導する「里親制度」を実施している。里親登録している農家は多いが、実際に機能している里親はわずからしい。また、就農希望者を単に労働力としてしかみない里親もいて、そういうところにいくと、就農希望者が独立できるノウハウを得ることは難しいという。萩原さんのもとにはいま40歳を過ぎた3人の研修生がいる。みんな家族がいて、人生をかけてやってくる。だからこそ萩原さんは「研修生にしっかり向き合いたい」という。その分、萩原さん自身エネルギーがいるから、長く里親を続けることは無理だろうとも話していた。この制度が悪いとは思わないが、新規就農者を増やす基盤になるかというと不安の方が大きい。

 

国も、なにもしていないというわけではない。農水省は、新規就農を目指す人に最長で7年間、毎年150万円を支払う「青年就農給付金」をやっている。しかし、大盤振る舞いな制度がいつまで続くのかというと、疑問といわざるを得ない。

 

だからといって、決して将来が暗いわけではない。いま農業に飛び込む人たちは、なみなみならぬ覚悟を持っている。前職で営業をしていたり、パソコン関係の仕事をしていたりと、それぞれが強みをもっている。萩原さんの話は続く。「そういう志の同じ人たちが5人ぐらいで組めば、小さな意欲ある法人なら、利益を上げていけるはずだ」と。夫婦2人の家族経営にも限界がある。経理の得意な人、営業が得意な人、少数でも手を組めばもっともっとやっていけるはずだという。利益が上がれば、その中から、新規就農を受け入れる農家も出るかもしれない。(続く)

井出ようせいブログシリーズ 被災地をみて